環境共生の公営住宅
独立前の作品です。豊島区の公営住宅の建替え事業に際して、環境共生住宅の仕様を取り入れて設計を行いました。
この航空写真の点線が敷地です。右側が公営住宅、左側が集会室となっています。
屋上を含めて徹底的な緑化を行い、緑被率50%を達成しています。
老朽化した公営住宅の建替え
敷地には築45年の木造平屋の公営住宅が建ち並んでいました。老朽化が進み危険でもあるため戸数を増やしての建替えを行いました。
公営住宅の建替えは、居住者にとっては朗報ですが、周辺住民にとっては迷惑な話でもあります。建替えによって環境が変わるからです。
そこで、従前の居住者と周辺居住者向けに30回ものワークショップを行い、双方が納得する建替えをめざしました。
周辺への配慮
周辺住民の皆さんには、建替えの影響がなるべく少なくなるように、建物をセットバックし、また日影の影響が出にくいように外周部は2階建てとしました。
敷地の周囲に塀は作らず、外周部は歩道状空地として開放されています。樹木もたくさん植えて、公園の中に建物があるようにしました。
公営住宅の予算の中で
公営住宅の建替えにはいろいろな制約があります。予算もそのひとつ。贅沢な仕様とすることはできません。
しかし、周辺のまちづくりや時代の要請から環境への配慮を提案しました。
さまざまな環境共生メニューを精査して、提案の中から8割以上のメニューを導入しています。
それにかかる費用は1割程度の増額に押さえることができました。
個性的な公営住宅
公営住宅の設計は南向きの単調な配置となり、また住戸も同じタイプのものが並んでしまいがちです。しかし、周辺住民との話し合いの結果、少しでも影響を少なくするため複雑な配置とならざるを得ませんでした。
そのため、多くの住戸の間取りは異なっています。
まちづくりへの配慮
この公営住宅が建つ場所は道路が狭く曲がりくねっているため消防活動に問題がある地区でした。
そこでこの公営住宅の建替えを契機に周辺のまちづくりを進めるように提案し、実現しています。
敷地の北側の幹線道路からの4m道路に消防車が入れるように、電柱や障害となる交差点の塀のセットバックをお願いし、敷地まで消防車が入れるようになりました。
敷地内には消防車が回転できるスペースを確保しています。雨水を貯めた消防用水槽を設置し、消防ポンプも配置して、災害時には活動の拠点となるようにしています。