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人をひきつける看板とは?

あふれる看板

日本の街は看板があふれています。特に商店や事務所が建ちならんでいるところでは、少しでも場所があれば看板を出して、お店や会社のPRに躍起となっています。様々な色彩や字体、イラストや写真を使い、照明にも気を使って、他よりも目立つように工夫をしています。
東南アジアの都市を訪ねると、どこも人と車と看板が街にあふれていて、そのエネルギーに圧倒されます。しかし、最近は日本でもバスや電車まで広告だらけになり、やはり日本もアジアの国なのだと改めて感じます。それはさておいて、看板を見てもらいたい立場からは、これは歓迎すべきことではありません。

多すぎる情報は伝わらない

街に看板があふれた結果はどうなっているでしょうか。所狭しと並ぶ看板は百家争鳴の状態になっています。お互いが邪魔しあって、目立たなくっています。目立つために一生懸命やっていることが、逆の結果をもたらしている場合が多いようです。
人間が五感で得る情報の大部分は視覚情報によるそうです。しかし、目に入った情報を全て認識しているかというとそうではなく、意識したものだけを見ています。意識が対象につながらなければ、ものは見えないということです。人間の脳では、多すぎる情報は排除されてしまいます。つまり伝わらないのです。

それは、街を歩いている時のことを思い浮かべれば判ります。誰も看板のことなど気に留めず歩いているのではないでしょうか。それぞれの看板は一生懸命デザインされています。しかし、普通の人はたまに変わったデザインの看板があれば気に留めるものの、ほとんどは意識していないのではないでしょうか。
看板を意識するのは、どこかのお店を捜している時や、逆に面白そうなお店を見つけた時に何のお店か、どんな名前かを確認する時などではないでしょうか。

「目立つ」から「ひきつける」へ

今、看板は目立つことを目的にしているものがほとんどです。目立つために、「色彩」「文字」「イラスト」「写真」などに工夫を凝らしています。しかし、皆が目立ちたがった結果、誰もが目立たなくなるという逆説にはどう対処したらよいのでしょうか。
私は、「目立つ」看板から「ひきつける」看板にしたらどうかと考えています。街を歩いていて、妙にひきつけられる看板に出会ったことはありませんか。飲食店であれば美味しそうな雰囲気の漂う看板。ブティックであればよいデザインの洋服が置いてありそうな感じの看板。それらの看板はたいてい大きくもなく、ことさらに主張しないものが多いと思います。

それらの看板の、何がひきつけるのかというと、小さなワンポイントのイラストだったり、効果的な照明だったりします。さらには看板を含む全体のデザインが人をひきつけるような気がします。効果的な看板はこの人をひきつける魅力を持った看板だと言えます。それでは、ひきつける看板とはデザインの問題だけなのでしょうか。デザイン以上に人をひきつけるものがあるのではないでしょうか。

人を引き付ける看板とは?1

人がひきつけられるのは人

人間はどのようなものにひきつけられるかを考えてみましょう。動くものと動かないものがあると、人間は動くものに興味を惹かれます。動く看板などがあるのもその効果を狙ってのことです。次に同じ動くものでも動物によりひきつけられます。これは動きが予想できないことと、感情移入がしやすいからでしょう。さらにいろいろな動物がいると、その中では同種である人間に最も興味を持つそうです。つまり人間がもっともひきつけられるのは他ならぬ人間だということです。

人が看板になる

もうお判りになられたと思いますが、人間が最高の看板になるということです。お店に魅力を感じるのも、商品と共にそこで働く人やお客さんの様子を見てのことだと思います。看板娘というにはまさしくそのことを表わしている言葉です。
最近の美容院は大胆に窓を透明にして、中の様子がよく見えるようにしています。これは人が最高の看板であることをよく判っているからです。物を売る商売ではない美容院では、なおさらのこと人が商品となっているのです。

人を引き付ける看板とは?2

キーワードはコントラスト

看板を語るキーワードはコントラストです。いかに他の看板と差別化をはかり、目立つことができるかが問題となるからです。
看板を計画する時には、まず看板を設置する周囲の状況をよく観察することから始めます。そして、周囲の景観に対していかにコントラストをつけることができるかを考えます。周囲に赤い看板が多ければ、補色となる緑系の色彩を使うとか、あまりにいろいろな色彩が氾濫している時には、白やグレーなどの無彩色にすることも考えられます。他の看板に大きな文字が多ければ、逆に小さめの文字にしたり、内照式(内部に照明を入れたもの)の看板が多い時には外照式(看板を外部から照らすもの)の看板にするのも効果的です。
1つの看板の中でもコントラストを考えます。看板の地と文字の色彩のコントラストを工夫し、同じような大きさの文字を並べるよりは、大きな文字と小さな文字のメリハリをつけることが効果的となります。周囲にそれほど看板がない住宅地や郊外であれば、このような考え方で計画すれば、目立つ看板とすることができるでしょう。

繁華街で目立つ看板

しかし、繁華街ではそれだけでは不十分な場合があります。皆が目立とうとして色や形を競い合った結果、誰もが目立たなくなっているのが繁華街の看板の現況だからです。そういう環境で目立つにはどうしたらよいのでしょうか。まして、店舗の業種によっては居酒屋チェーンなどのようにあたり構わず派手で巨大な看板を出せばよいというわけにはいきません。その店舗の誠実さやインテリジェンスが表れる看板にしたいところもあるでしょう。
この場合もやはりコントラストが大切です。看板だけで周囲の看板とコントラストを付けることには限界があります。その時には、別の素材でコントラストをつけることが必要になります。その時に、素材として、そこで働く人を見せることが効果的だと申しあげました。さらに、目立つ看板から人をひきつける看板にすることをお勧めしました。それもコントラストをつけるという意味からの提案です。
看板について考える時、看板そのものだけでなく、すべてが看板であると考えることが必要です。目で見るものには実に多くの情報が含まれています。建物の外観、外部から覗かれるインテリアや商品などの様子、店員の人の笑顔やきびきびした様子……それらから得られる印象で、店舗が選ばれていることが多いと思います。

建築化する看板

もう一歩進んで、コントラストをつける手法について考えてみましょう。
次の2つの写真を見比べてください。どのような違いがあるでしょうか。上は大きな看板が建物の外壁に取り付けられている例です。下は看板が建物のデザインに溶け込んでいることがお判りいただけるでしょうか。ただ単に看板を付けるのではなく、積極的に建物のデザインと融合化しようという意図が読み取れます。このような例を私は、建築化看板と呼んでいます。

人を引き付ける看板3

人を引き付ける看板4

次の写真をご覧ください。1つの建物の2階には通常の看板がついていますが、1階にはタイルの外壁と白いテントという建築化された看板が付いています。遠目には2階の看板が目立ちます。しかしお店の雰囲気を伝えているのはどちらでしょうか。街の景観として見た時にどちらが景観を良くしているでしょうか。この写真の1階はケーキ屋さんです。写真を見てお判りいただけるように、落ち着いたおしゃれな雰囲気が伝わってきます。

人を引き付ける看板5

人を引き付ける看板6

このように建築化看板は看板単体では表現できない雰囲気を伝えることができます。しかもその雰囲気は建築物のサイズですから、より大きく、したがって訴える力を持っていると言えます。普通の外壁に取り付ける看板との差別化を図り、しかも必要以上にでしゃばらない上品な看板となります。
このような建築化看板の例は、街に出て少し注意するとたくさん見つかります。共通しているのは、おしゃれなお店や流行の先端を行く店に多いことです。テナントとして入居しているビルではできることが限られる場合が多いですが、ご自分で所有している建物なら、思い切ったことができます。

下の写真はビルの上階での建築化看板の例です。窓そのものを看板とショーウィンドウとしてデザインしています。まさに建築化された看板の中で、動く人の様子が見える好例となっています。

人を引き付ける看板7

株式会社コムネット Together 連載 「いきたくなる歯科医院」より転載

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