気をつけたい防犯とは?建築設計のアドバイスをいたします。お気軽にお問合せください。

気をつけたい防犯

狙われる歯科医院

最近、歯科医院に泥棒が入られたというお話を伺うことがあります。目立たない裏側の窓ガラスを割って侵入されたり、受付カウンター越しにレジスターごと盗まれたりといった例です。
私たちは、これからの歯科医院の作り方として、待合室などが外部からよく見えて、初めての方でも気兼ねなく入りやすいようにすることをお勧めしています。同じように受付カウンターもできるだけオープンにして、患者さんと身近に接することができるようにお勧めしています。
このような歯科医院づくりと防犯は両立できるのでしょうか。結論から言うと、開放的な歯科医院は防犯的にも優れていると私たちは考えています。もちろん、やみくもに開放的にすればいいのではなく、きちんとガードすべきところはガードし、泥棒に隙を見せないようにしなければなりません。

泥棒の侵入しやすい場所

まず、泥棒はどこから侵入するかを見てみましょう。歯科医院と言っても、住宅の一部を使っているところ、マンションの一室、事務所ビルの一室など、その立地は様々です。そして、住宅やマンション、事務所では、それぞれ泥棒が侵入しやすい場所が違います。
下のグラフの階別被害率を見れば判るように、戸建て住宅では1階が圧倒的多いのに対して、マンションや事務所ビルでは各階に分散しています。

侵入経路

 

侵入口を見ると、戸建て住宅では居室の窓が多いのに対して、マンションや事務所ビルでは表の出入口が多くなっています。誰でも自由に入れるビルほどその傾向が高くなっています。マンションや事務所ビルでは表玄関から入って上の階に上がり犯行に及ぶため、階が上でも被害が多いのです。マンションのバルコニーも安心はできません。雨樋を登ったり、非常階段や隣のビルから侵入することもあります。
侵入の方法では、戸建て住宅がガラスを破られるのが多いのに対して、マンションや事務所は錠破り(ピッキング)が多くなっています。マンションは1階以外では事務所と同じような傾向となっています。

ガラスとドアの安全性

戸建て住宅で被害の多いガラスには、下の図のようにたくさんの種類があります。よくある誤解として網入りガラスなので安全と思い込みがちですが、あの網は火災の時に熱でガラスが割れても脱落しないためのもので、破壊には弱く防犯性は期待できません。強化ガラスも普通のガラスに比べると強度はありますが、先端のとがったもので割ることができます。
断熱性能があがることで最近よく使われだしたペアガラスは、ガラスが2枚になっている分、破壊するのに時間がかかるという意味でやや安全性は高いものの、万全とは言えません。合わせガラスとは、2枚のガラスの間にフィルムをはさんだもので、フィルムの強度や枚数によっていくつかの種類があります。
マンションや事務所ビルで被害が多いピッキングとは、ドアの錠を特殊な器具を使って解錠することです。古いタイプの錠だと、数分で開けられてしまいます。新しい錠でも、すぐに解錠方法が広まるなど、泥棒とのいたちごっこになっています。
 また、扉の丁番をはずしたり、ドアに穴をあけて手や道具を入れ、内側のロックをはずすなどの手口も出ています。

ガラスの防犯性能

狙われる留守の時間

泥棒が入りやすい場所を見てみましたが、その時間を見ると、人がいない時間に襲われているという共通点があります。住宅が狙われる時間は日中が多く、逆に事務所や店舗は夜間が多くなります。
泥棒が狙いやすいのは、まず「留守であること」、次に「入りやすくて逃げやすい」ところです。そして「5分以内に入れること」です。戸建て住宅では、インターホンを鳴らしたり、人の動きがないか様子を見て、留守であることを確認します。そして、塀の陰に身を隠して庭に廻り、1階のはきだし窓などのガラスを割って入るという場合が多くなっています。一方、マンションや事務所・店舗ではインターホンで留守を確認した後、ピッキングで侵入するという方法が多くなっています。

歯科医院の特徴

歯科医院ではどうかというと、まず夜間が危ないという点では事務所や店舗と同じですが、もうひとつ昼休みが危険な時間帯です。
多くの歯科医院では、気の早い患者さんのために、昼休みでも玄関の鍵を開けておくことが多いのではないでしょうか。一方、スタッフの皆さんは昼休みには休憩室に入ったり、外に食事に出られます。受付には誰もいなくなってしまいます。冒頭でご紹介した事例も、窓ガラスが割られたのは夜間で、受付カウンターが狙われたのは昼休みのことです。
このように防犯の状況は危険度が増してきています。泥棒に入られないために、さまざまな工夫をしなければならなくなりました。

防犯のソフト的手法とハード的手法

防犯を考えるためには、一般に次の4つの手法があります。
@周囲からの監視の確保
A領域性の強化
B犯罪者の接近の制御
C被害対象となる部材や設備の強化・回避

4つの手法

 

歯科医院を例に考えると次のようになります。
まず犯罪をしようとする者が、被害対象物(この場合は歯科医院)に近づこうとするのを、「監視の確保」で防止します。近所の方やスタッフ・患者さんの目があるとそこで犯罪を犯そうという気持ちがなくなります。防犯カメラを設置することもこの分類に入ります。夜間室内に電灯を付けておくことも、侵入者にとっては見られる危険があるのでいやがられます。私たちが開放的な歯科医院をお勧めしているのもこの監視の確保のためです。
常に人の気配がしたり、近所で掃除や挨拶などをしていると、外部の人間には「領域性」が感じられ、近寄りがたくなります。これも大切な防犯対策です。私達はその建物や住宅の人が顔見知りかどうかで、その建物への視線の投げかけ方が違ってきます。そして普段と様子が違ったり、いつもと違う人がうろついているとすぐにおかしいと気付くことができます。
この2つが主にソフト面の防犯対策です。次の2つは主にハード面の防犯対策です。
夜間など人の目が届かない時には、犯罪者の動きを限定し、「接近しにくく」します。建物の裏側に入りにくくしたり、入っても身を隠しやすい所を作らなかったり、歩くと音がでるように砂利敷きにしたりする対策です。また、防犯ライトをつけることもこの部類に入ります。因みにブロック塀は泥棒にとっては身を隠すことができるし、登ることができるので大変に好都合だそうです。逆に生垣は入りにくく音が出るので嫌われます。
私たちは歯科医院の受付カウンターをオープンにするようにお勧めしています。そのほうが患者さんとより親密にお話ができるからです。一方で、防犯の面からは接近しやすいため狙われる危険性が高くなります。次の写真は私達が設計させていただいたもりやま歯科の例です。普段は開放されている受付カウンターが昼休みはガラス戸によって閉めることができます。ガラス戸によって開放性と防犯性を両立させています。

もりやま歯科

もりやま歯科

以上の対策の後に、物理的に被害を防止する方法を考えます。鍵を二重にしたり、ピッキングやサムターン回しなどへの対策、ガラスの破損防止対策にフィルムを貼ることなどがこれにあたります。金庫やレジスターは持ち去られないように固定することも必要です。
このように防犯対策というと、鍵やガラスのことだけに目が行きますが、その前にもやるべきことがたくさんあります。

破れ窓理論

最近、ブロークンウィンドウズ(破れ窓理論)が注目を集めています。ニューヨーク市警が採用したこの理論は、犯罪を小さなうちに摘み取れば重大犯罪が起こりにくいという理論です。実際にニューヨークではこの理論を適用することによって重大犯罪が1/3になったそうです。
この理論を応用して考えると、犯罪が起こらないようにするには、はじめに窓ガラスが割られるような小さなことが起こらないようにすることがポイントです。そのためにはふだんからゴミが散らかっているとか、ガラスが汚れているということを見逃さず、常にきれいにしておくことが大切です。
ある警察関係者のお話では、殺人などの事件が起こる家では、ほとんど例外なくトイレが汚れているそうです。直接の因果関係がどうなっているかは判りませんが、破れ窓理論と共通する原理があるような気がします。
トイレも歯科医院の廻りもいつもきれいにして、近所の方とおつきあいをするのが、よい防犯対策になると思います。そして、防犯対策を行うことは、自分の身を守ると共に、犯罪者を作らないことになるのです。

株式会社コムネット Together 連載 「いきたくなる歯科医院」より転載

  • 設計事務所エコラインのトップページへ
  • 設計事務所エコラインがめざすもの
  • 設計事務所からのアドバイス
  • エコラインのプロフィール
  • エコライン小野加瑞輝の作品集
  • 環境製共生建築作品集
  • 住宅設計作品集
  • 集合住宅設計作品集
  • 店舗設計作品集
  • 歯科医院設計作品集
  • 計画案
  • 防災まちづくり
  • ランドスケープ
  • 建築のものがたり

株式会社エコライン

〒177-0051
東京都練馬区関町北
5-5-8 シェニートモンチーク武蔵関1103
Tel 03-6383-1245
Fax 03-6383-1246